JACグループの財務面での特長は、「高い利益率」と「高い資本効率」にあります。
当社グループでは、「人材ビジネスのプロフェッショナル集団として、質と収益で世界 No.1」となることを目標として掲げていますが、この目標達成に向けて、財務面では、この2つの特長を維持、強化していくことが重要であると考えています。
利益率の向上にむけて
当社グループの2023年度の売上高営業利益率は23.8%であり、過去10年間の単純平均では27.1%と高水準を維持しています。この高い利益率を維持するためには、利益率の高い事業にフォーカスし、その事業を拡大させていく必要があります。このため、今後も、国内人材紹介事業のオーガニック成長を軸に2030年世界No.1に向けた高成長を実現していきます。
また、いっそうの利益率改善に向けて、国内人材紹介事業では、売上原価および販管費の削減に取り組みます。具体的には、まず、自社データベースの強化やリファーラル、スカウトによるキャンディデイト(候補者)の確保により、社外の広告媒体やスカウトサイトの使用を削減し、売上原価率の低減を図ります。この取り組みにより売上原価率は2018年の9.8%から、2023年は2.1pt減の7.7%へと改善しました。また、DXによる業務革新などにより、ミドルバック業務の効率化やコンサルタントの生産性の向上を図り、販管費の低減を実現していきます。
また、現在、利益率の低い海外事業では、より収益性の高い地域に資源を振り向けていく他、海外事業のヘッドクオーター機能を日本本社に集約することで利益率の改善を図っていきます。
資本効率の維持・向上にむけて
当社グループの2023年度のROEは、36.4%と推定株主資本コスト8%〜8.5%を大きく上回り、過去10年間(コロナ禍の2020年を除く)のROEの単純平均でも約33%と、高い水準を継続的に維持しています。また、2023年度末の株価純資産倍率(PBR)は6.02倍で、直近10年間においても約5~7倍の高い水準を維持しています。
当社では一定のキャッシュポジションを確保していますが、これは機動的な事業投資を行うための資金であると同時に、リーマンショックのように収益が大幅に落ち込んだ際にも当社の最大の資産である社員の雇用を維持することができる資金を留保しているためです。
こうしたリスク対応資金を確保しつつも、今後も、いっそうの利益率の改善と高い成長率の達成により、高い資本効率を維持し、企業価値向上を図っていきたいと考えています。
事業投資方針
世界No.1を目指すにあたっては、オーガニック成長に加え、インオーガニックの成長の機会も模索する必要があり、このために、当期純利益の60%~65%を配当した残りは成長投資に振り向ける方針としています。
事業投資においても、「高い利益率」と「高い資本効率」を維持しつつ成長するため、(1)確実性の高い高収益事業であるかどうか、(2)資本コストを上回り高い資本効率を維持できる投資効率が見込めるかどうか、そして、(3)既存のコア事業であるハイクラスの人材紹介ビジネスとのシナジーがあるかどうかを判断基準としています。事業投資の際のリスクテイクは最小限とする方針をとっており、大きな資産を必要とするような事業や投資回収期間が長い事業には、原則として投資を行いません。
また、人材紹介事業は少ない初期投資で事業が開始でき、マーケット状況に応じて柔軟に撤退や再参入が可能であるため、特に海外拠点や国内支店においては、1~2年赤字が続いた場合には事業の見直しを開始し、中長期的にもマーケットの回復が見込めないと考えられる場合は随時撤退する方針をとっています。
株主還元方針
・配当性向 60%~65%をめどとして配当を行う
・利益成長にともない、安定的に増配基調を維持する
株主還元は経営の重要課題として捉え、投資・還元のバランスを適宜判断し、主に配当により実施することを基本方針としています。2023年度の一株当たりの配当金は分割後で22.5円となり3年連続増配となりました。また、株主資本配当率(DOE)は21.1%と非常に高い水準となりました。今後も高い配当性向を維持し、次なる成長に向けた事業投資のための内部留保は一定確保しつつ、自己資本の拡大を上回る株主価値の成長を目指します。